労働契約の成立(第6条)
(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
趣旨
売買契約や賃貸借契約は、当事者間の意思表示の合致、すなわち、合意によって成立します。労働契約も、また、当事者間の合意により成立します。これを諾成契約といいます。
実際には、使用者と労働者の間で「雇いますよ」「雇ってください」という合意に至れば、労働契約が成立します。
このように、当事者の合意によって契約が成立することは、売買契約や賃貸借契約であっても労働契約であっても同じであり、契約の一般原則です。労働契約法第6条は、この労働契約の成立についての基本原則である「合意の原則」を明確にしています。
合意の要素
労働契約は、労働者が「使用者に使用されて労務を提供すること」とともに、使用者が「労務の提供の対償として賃金を支払うこと」を合意の要素として成り立っています。すなわち、労働者には使用者に労務を提供する義務があり、使用者には労務の提供の対償として賃金を支払う義務があるということです。逆に、これを権利として見れば、使用者には労務の提供を請求する権利があり、労働者には労務の提供の対償として賃金を請求する権利があるといえます。これを双務的な権利義務関係といいます。
そして、「
労働者とは」でも説明しているように、労働者と使用者の間には、「使用従属関係」が認められます。これにより、労働契約は、使用従属関係が認められる労働者と使用者との間において締結される契約であり、労働者側からみた場合には、一定の対価である賃金と一定の労働条件のもとで、自己の労働力の処分を使用者に委ねることを約する契約であるといえます。
労働契約成立の要件
労働契約は、あくまで、労働者と使用者が合意することによって成立します。したがって、労働契約書に捺印することで労働契約が成立するわけではありませんので、労働契約書の作成は、労働契約の成立要件とはなりません。また、契約内容についての書面を交付することについても同様です。ただし、前述の通り、労使のトラブルを防止するためには、労働契約書を作成したり、書面を交付したりすることは大変重要なことではあります。
また、労働契約の成立の要件としては、労働条件を詳細に定めていなかったとしても、労働契約そのものは有効に成立します。
民法の「雇用契約」等との関係
民法第623条は、「雇用」について次のように定めています。
(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
これを見ると、「当事者の一方」を「労働者」に、「相手方」を「使用者」に換えてみると、労働契約法第6条と同じ内容になります。
したがって、民法第623条が規定する雇用契約は、労働契約に該当するといえます。
ただし、前述のように、労働契約の本質は「使用従属関係」にあります。ですから、その契約が労働契約にあたるかどうかは、契約の名称や形式などにかかわらず、使用従属関係にあるかどうかによって決まります。
例えば、契約の形式が民法で規定する請負契約であっても、実態として使用従属関係が認められ、労務を提供する者が労働契約法第2条第1項の「労働者」に該当すれば、労働契約に該当します。同様に民法で規定する委任契約であっても民法上に規定がない非典型契約であっても同様です。
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(準委任)
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
労働契約と民法上の契約との関係
<参考文献>

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